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人は、正しいと信じていたものがそうではなかったと気づいた時、絶望する。自分の存在そのものも信じられなくなってしまう。絶望。それは、自分が生きていることの意味を失うこと。明日を信じられなくなること。けれど神には絶望など存在しない。 ガイアに撃たれ、海に落ちたアルテミス。パンに助けられ、意識を取り戻した彼女は、闘ってはならない相手と戦っているアポロンをなんとしても止めなければならない。もうこれ以上、愚かなあやまちを繰り返さないために。 アルテミスとアポロンの絆の強さ。悲しいです。消された記憶をも越えて呼び合う魂の結びつき。それは、科学の力ごときでは決して消すことの出来ない、人の思い。そう、愛し合う心。人は人でしかない。でもその心があるからこそ、人は人であり続ける。どんなに愚かでも、いや、愚かであるからこそ愛しい。 「ガイアアアアアアアアアアアア！！」 アポロンの絶叫。愛するものを失った怒りと憎しみに突き動かされる彼は、神ではなく、人そのものだった。 「俺達なら真の意味で平和を作れたんだ」 彼は心から信じていた。自分達は神であると。自分のしていることが正しいのだと。だから、お互いのために自分の命を投げ出そうとする２人の姿にも、少しも心を動かされたりはしない。同じなのに。アポロンが姉を思う気持ちと。アルテミスが彼を思う気持ちと。でも・・・ 「そうでなければ、俺達のこの姿は何なんだ？」 足元から全てが崩れていく。崩壊していくマグマ島と同じように。 そして、アポロンの最後の言葉。 「姉上・・・」 人としての、彼の全ての思いが詰まった言葉。アポロン、悲しい。 そして―――海の底に吸い込まれていくアルテミスの亡骸。パンの悲痛な叫び。そして、あとを追っていくアトラスとパン。 「待って！ダメよ！戻って！」 ００３の声に振り返ったパン。ごめんね、でも行かなければならない、どうしても。哀しくそう訴える瞳には涙さえもない。まだ小さな子どものうちに、あんな姿に改造されてしまった彼が、たった一度だけ自分の意志で選ぶことが出来た、人生の選択肢。それが、愛するアルテミスに殉じることだったなんて。人間としての喜びも悲しみも、まだほとんど何も味わわないうちに。 |
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