 決意とともに、万感を込めてフランソワーズの手を握り締めるジョー。限りなく優しい微笑みを浮かべて。言葉など要らない。無理に言葉にすると、何か大切なことが零れてしまいそうで。でもぬくもりと微笑でなら、そっくりそのまま伝えあえる。見つけた。キミの瞳の中に。ずっと探していたmissing
piecesを。大丈夫。僕はここにいる。これからもずっと。キミのそばに。それは、時間にすれば、ほんの一瞬のこと。でも２人にとっては永遠に値する瞬間。フランソワーズの手をすり抜けて消えていくジョー。懸命に掴もうとする白く細い指が悲しすぎる。 今回のこの場面が、今までのあらゆる「動くジョーとフランソワーズ」映像のマイベストです。深くて、哀しくて、だからこそ美しくて。心を通わせて、そして「その時」に向き合おうとする。私が思っているジョー＆フランソワーズの究極のツボを直撃されてしまいました。 一方、同じように絶望的に追い込まれた状況でも、無我夢中に闘い続ける原作の００９たちは、あくまでも正義の味方。「きみたちの死はけっしてむだにはしない ぼくたちの手で かならず地底に平和を・・・・・・地上に平和を・・・・・・・・！」そう強く決意する。けれど平成版の彼らは違う。わかっている。自分たちが、ここで終わりを迎えるかもしれないこと。自分たちはむしろ無力で、地底にも地上にも、そんなに簡単に平和を取り戻すことは出来ない。でも、それでも阻止しなければならない。破滅を。ほとんど不可能ともいえるそのことを成し遂げるには、痛みを伴うかもしれないことも。魔人像の中で、「ぼくに・・・死ねというんだな。『黒い幽霊』といっしょに！ふん！『黒い幽霊』といっしょなら心中しても あいてにとって不足はない」という原作のジョーと、「わかってる。僕に魔人像を止めて、ＢＧを倒せって言うんだね。それで戦いが終わるなら、僕は・・・」の平成ジョーくんのセリフの違いにも、それがはっきりと現れている。後で触れますが、この違いが、見ていて感じたクライマックスのポイントの、アニメと原作の「微妙なずれ」の原因になったような気がします。 わかっている。これは、地上に残された仲間たちも同じ。「でも―――どうして彼だけなの？私達も一緒に・・・」「犠牲は少ない方がいい」「アイツにだけ背負わせたのかよ」「だったら私も行くわ。お願い、私も魔人像に送って！」「コイツは、きつすぎるぜ、００１・・」「わかってる」 そう、わかっている。だから００１に向かって「ひどい」とは言わない。でも、いやよ。こんなのいや！覚悟していた。平和をこの手に握るためには、闘いのない未来を手に入れるためには、払わねばならない犠牲もある。人類の未来のために、自分たちの未来はなくなってしまうかもしれない。それは覚悟している。でも―――どうして彼だけなの？あの時、約束したのに。「死ぬ時は一緒」と。脳裡に浮かぶジョーの最後の微笑み。約束が違う。彼ひとりを死なせてしまうなんて。 遺される者の悲しみとしては同じであったとしても、あの「手のシーン」の存在で、フランソワーズの涙、原作とはかなり意味の違うものになりました。だから、００４の例のセリフがカットされても不自然じゃなくなった。むしろ、必要なくなってしまった。それにあのセリフは、「おれは・・・戦うためにつくられた半機械戦士なのだ！だから戦うのだっ 人間たちのために・・・・平和のために・・・・なんてんじゃないっ おれ自身のために・・・・おれとおなじサイボーグであるなかまのために・・・・たとえ死んでも・・・・おれは戦いつづけなければいけないんだっ」という前フリがあってこそ、生きてくるものだと思うし。 「泣くなよ、００３。俺が助けに行く」「無理だ、もう間に合わない」ジェットが勢いよく飛び上がり、そのあおりを受けた波でフランソワーズが大きく揺れるシーン。ここは、ヨミ篇を動くアニメで見られて良かった、と心から思ったシーンです。ごめんね、ジェット。君がフランちゃんのことを好きだから、彼女が泣いているのを見たくないから、その一心でジョーを助けに行ったらどうしよう、なんてくだらないことを考えてた私を許して。「泣くなよ」のセリフを聞いても、全然そんな風には思わなかった。「やってみなきゃ、わかんねえよ！アイツひとりだけ、死なせられねえ！」ううう、キミはそういう人なのに。「００２！」皆の祈るような気持ちを代弁するように叫んだ００４。そして―――「最後の１秒までチャンスにしがみついてみる。その１秒まで。その１秒が過ぎたら・・・神よ、生まれて初めて今、あなたに祈ります」平成版のジェットだから、いつもの彼とのギャップがあるからこそ、この言葉の重みが増した。神なんか信じない。、そう言いきった彼だからこそ、あえて省略された部分も、これでいいと思う。この、懸命に上空へ飛んでいくジェットの姿に、心が激しく震えました。 そして魔人像の中での、００９とスカールとの死闘。今までで最強のジョーを見ることが出来て幸せ。拳の正面衝突で飛び散る火花！床に転がったスカールの頭部を蹴り上げるジョー！ああ・・・やっぱり・・・私は・・・・（以下省略）。覚悟を決めたからこそ、のジョーの強さ。でも、強いジョーは哀しい。でも、だから・・・だから好き。ああ、とうとう書いてしもた；； 自分たちはロボットじゃない。とても 敵わないと思う相手にぎりぎりまで追い込まれながら、それでもここまで来た。それは、僕たちが人だから。闘いのない未来をつくりたいという思い。そのためにはＢＧを倒さなければならない。たとえ、敵わない相手でも。そんな強い思いが、不可能の中に可能性を生み出してきた。そう言い放つ００９の前に、ついにＢＧの本体が。しかし、それは――― |
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