 「違うよ、そんなんじゃないって」真一がジョーをクルマへと誘いながら、フランソワーズのことを尋ねた時の、ジョーの答え。ここで照れながら肯定なんかしちゃったら、島村くんじゃなくなってしまうんですけどね。あああ。でも何度も繰り返してこの場面見ているうちに、だんだん悲しくなってしまいました。幸せな恋人同士が背負っているはずのないものが、自分たちを結びつけている。君たちが考えるような「カノジョ」なんかじゃない。彼女が気づいたんだ。君たちが僕を狙って近づいてきた、ということに。君たちがサイボーグだということに。彼女はそれを僕に伝えた。伝える方も、聞くほうも胸が張り裂けそうになる事実を。だけど、僕たちはそんな仲間なんだ。そう言ってしまいたい気持ちを、懸命に抑えながら明るく言ってるみたいで（涙）。そしてフラソワーズ。懐かしい友達が目の前にいる。再会を喜び合える相手。なのに、彼らは刺客としてやって来た。自分たちを倒すためのサイボーグとして。おそらく、そのためだけに改造されて。こんなことがあっていいのだろうか？ジョーの、たとえようもない悲しみ。それを彼女なりのやり方で、一緒に受け止めようとする。冷静に判断して、一緒に行かず、仲間の助けを呼ぶ。自分なら、ジョーの姿を見失うことはない。おそらくは彼らを攻撃することなどできない００９を援護するために、あとを追う。間一髪のところで００２に助けられる００９。そして００３のスーパーガンが、的確に彼らの動きを封じる。彼らを倒そうとするのではなく。そのあと００３は、逃げ去っていくクルマを狙って撃って、タイヤをパンクさせることも出来たはずなんです。やろうと思いさえすれば。でもそうはしなかった。彼女はジョーに尋ねる。「どうするの、００９？」彼らを今ここにとどめておいたら、別のやり方で００９を気遣う００２のこと。きっと自分が３人と対決して、ジョーの苦しみを減らそうとするはず。でも、それじゃだめ。そんなことを００９は望んでいない、と彼女にはわかっていたから。辛いけれど、でも彼の戦いを見守ろうとする。仲間を思うからこそ。 「もっと早く逢えれば良かったね」浜辺で牙をむく３人。「俺たちは」「お前を倒すために」「つくられた」その異様な姿は、ＢＧが彼らを本当の暗殺者としてではなく、００９に対する見せしめとして改造した結果なのでしょう。顔はもとのまま。けれど、その姿は、もはや人間ではない。体そのものがマシンガン。鋭い牙。まるで獣のロボット。「やらなきゃ、わたし達や他の大勢の人たちが酷い目にあうのよ」もちろん彼らには、ジョーを倒すことのできる性能など装備されていない。お前が我々に逆らう限り、罪もない人々が、こんな目にあうのだ。お前たちのせいで。犠牲者はこれだけは終わらない。これは、BGの警告。工場の監視カメラが、ちゃんと００９と００３の姿を捉えていたのだから、３人がサイボーグだとすぐにわかるのも計算のうち。００９に思い知らせるために。練りに練られたシナリオに、彼らを引きずり込んでいくために。 「俺はお前が憎い。お前のせいで、お前一人のせいで、何で俺たちがこんな目に合わなければならないんだ！」３人の体に仕掛けられた爆弾のスイッチが入る。ボグートは、爆発に００９が巻き込まれるなどとはもちろん思っていない。あいつを殺せと命令しても、彼らがそれに従ったとしても、最後にはジョーを庇って死ぬことも、計算のうちだったから。むしろ、そのほうが００９に与える打撃は大きいとわかっているから。 燃えていく、真一の設計した家。暖炉とソファのある、あたたかい自分たちの家。教会にいた頃、きっと４人で相談していたのでしょう。いつか大人になったら４人でこんな家に住もうと、あれこれ考えていた夢の家。炎に包まれていく写真と鉄道模型。懸命に働いて、その夢を実現した３人の平和な日々を、ＢＧは、自分に打撃を与えるためだけに破壊した。許すことは出来ない。打ちひしがれながらも立ち上がる００９を、２人の仲間が静かに迎える。 いよいよ、始まる。いや、もうすでに始まっている。闘いたくないなどとはもう言っていられない、最後の闘いが。 |
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