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「僕みたいなのが良かった？ それとも００２？００４？」 |
| 世界各地で起こる天変地異。地は激しく揺らぎ、稲妻が空を裂き、炎が街を焼き尽くす。まるで聖書の黙示録の記述が、現実のものとなったかのように。そして姿を現したのは、ギリシア式の戦車を2頭の馬に引かせ空を翔ける、燃える髪を持つ神。人々は畏れ慄き、そして口々に「神」の名を唱える。荒れた世界を救うために神は現れた？それとも、ついに裁きの時が来たのか？ 神とは？天使とは？神の意志とは？まさに石森先生の未完の原作のテーマそのものです。今回のミュートス篇で、その世界の一端を窺い知ることができるのでしょうか。 他を圧倒する力を持つものを、人は神と呼んできた。理屈では説明のつかない現象を、神の仕業と納得してきた。人は神が人に救いをもたらすと信じている。けれど、それは本当だろうか？少なくとも、神は創り、破壊する。その神の意志に、人意は反映されるべくもない。 一方、自ら望んだわけでもないのに人並み以上の優れた、強い力を与えられた００ナンバーたち。でも―――強い”力”がその人を幸福にするとはかぎらない。むしろその力ゆえに、彼らは普通の人間ではいられなくなった。その深い悲しみと絶望。 次に神が現れるであろう場所―――紛争の続く国境の街はずれに、ドルフィン号は停泊している。 「また兵士達が・・・あんなに」 遠くから聞こえてくる砲弾の音。遠くの空を赤く染める戦火。けれど００３には死んでいく兵士一人一人の姿が、すぐ目の前にあるかのように見えてしまう。 「見ちゃ駄目だ、って言っても無理か」 ００９に背中を向けたまま低く呟く００３。 「私、この能力嫌い」 「うん・・・」 「それに・・・見えるだけで何もできない」 戦闘時、他のみんなのようには自分は積極的な働きが出来ない。彼女はそのことに苛立っている？おそらく、違う。むしろ―――どうせ人間じゃないなら。いっそのこと、とことんまで自分が人間でないと思い知らされるような改造がされていたら。諦められたかもしれない。普通の人間としての幸せを求めたいという気持ちを持たずにすんだかもしれない。彼女のそんな叫びが聞こえてくる気がして。 「どうせサイボーグにされるなら、もっと完璧に」 ００３の迸る感情を、静かに受け止める００９。 「僕みたいなのが良かった？それとも００２？００４？」 深く哀しく重い言葉。口調も、こめられたジョー自身の思いも、限りなく優しいのだけれど、それだけに救いのない一言。 「ごめんなさい・・・」 試作品の中では最も優れた体をもつ００９。同じなのに。どれだけ優れた体をもっていても、同じように苦しんでいるのに。自分がつまらない感情をぶつけたせいで、彼を傷つけてしまった、とうなだれる００３。でも、あのジョーの言葉って、その場を取り繕う表面的な慰めの言葉なんかより、ずっとずっと優しいと思う。同じ悲しみを共有しているからこそ言える言葉。君だけが苦しんでるんじゃない、って意味ではなく、だけど君は一人じゃないんだよってジョーは、控えめに言ってる気がして。 |
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