君は必死になって、いったい何を守ろうとしてるの？
どうしてそんなに一生懸命闘ってる？
なぜ・・・そんなに・・・
思わずウィルドは、彼女をそっと抱きしめた。
フランソワーズはぴくっと体を一瞬こわばらせ、
怯えた目をして顔を上げた。
「お願いだ。・・・もう少し・・・もう少しだけ・・・こうしてて・・・」
ウィルドはかすれた声でそう呟くと、亜麻色の髪に顔を埋めた。
いつのまにか、とめどなく溢れ出る涙。
自分でも気づかないうちに泣いていた。
―――なぜ・・・僕は・・・
彼女が微かに震えているのがわかる。
だが、ウィルドの涙の雫が青白い頬に伝い落ちた時、
フランソワーズはふっと体の力を抜いた。
静かな、でも限りなく優しい受容――― |
第２０章 「漂泊」
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