| よく晴れた五月の午後――。 若々しい緑の街路樹に縁取られた通りには、カップルや親子連れの姿が目立つ。 買い物を一段落させた２人は、オープンカフェで向かい合ってコーヒーを飲んでいた。 「良かった、今日がこんないいお天気で。」 青空を見上げながら、フランソワーズは幸せそうなため息をつく。 燦燦と降り注ぐ太陽の光を浴びて、彼女の髪も瞳もきらきら輝いている。 でも・・・。 彼女はいつもと違う。今朝からずっとそんな気がしていた。 ――何かあったのかい？ そう聞こうとした途端、フランソワーズはふっと首をかしげた。 「？」 しばらくじっと耳をすましていた彼女は、ジョーに向き直り、聞こえる？と尋ねた。 「何が？」 怪訝な顔をする彼を、蒼い瞳が微笑みながら見つめる。 「ほら・・・ね？」 爽やかな風に乗って、ジョーの耳にも届いた、不思議な音色。 「何だろう？奇妙な・・・オルゴールみたいな音だ。」 「もしかしたら・・・。ね、行ってみましょう！」 ２人は、通りの向こうの広場へ足を向けた。 「やっぱり！メリーゴーランドだわ！」 フランソワーズは小さな歓声を上げた。 「いつの間に、こんなものが？」 首をひねったジョーを可笑しそうに見つめ、彼女はくすっと笑った。 「運んできたのよ。ね、ほら。これは新しく作ったものじゃなくて、かなりの年代ものでしょう？」 色のさめたテント。 真鍮のポールはかつての黄金の輝きを失っている。 「運んできた？」 人の足が触れるせいだろう。色がはげたり、黒ずんだりしている木馬の胴体。 「パリでもね、広場に、時々メリーゴーランドが来たわ。トラックに積み込んで、あちこちまわっているのよ。」 「サーカスみたいに？」 「そうなの。ああ・・・懐かしいわ。メリーゴーランドが来てる、って聞いたら、はやく乗りたくて乗りたくて仕方なくて。いつも駄々をこねて・・・叱られちゃった。」 肩をすくめてフランソワーズは笑う。 「君が・・・駄々をこねたの？信じられないな。」 「それだけ大騒ぎしたのに、いざ乗ってだんだんスピードが上がると怖くなって・・・。帰りはいつも泣きべそかいてたわ。」 遠い目をして微笑むフランソワーズを、ジョーは柔らかい表情で見つめた。 ＊ どこかもの悲しい、調子はずれの音楽が鳴り出した。 ゆっくりと回転を始めるメリーゴーランド。 子供たちだけでなく、童心に返った大人たちも、馬にまたがってすっかりはしゃいでいる。 「あ・・・見て！あの子たち、可愛いわね。」 小さな兄妹が１つの馬にのっている姿に、彼女は目を細めた。 「パパ〜！ママ〜！！」 手を振ってはしゃぐ妹とは対照的に、兄は自分の前に座った妹を抱えるのに懸命になっている。 きっと、とフランソワーズは小さな声で呟いた。 「あの子は『妹が落ちないように気をつけるのよ。お兄ちゃんなんだから、ちゃんと見ててあげてね』って言われてるのね。見て！あんな真剣な顔して。」 見る見るうちにメリーゴーランドのスピードは速くなる。 馬はゆったりと上下しながら、くるくると飛ぶように回っている。 「あ！」 ２人は顔を見合わせ、同時に微笑んだ。 「泣きべそかいてる・・・。」 先ほどまでの笑顔はどこに行ったのだろう。女の子はいつのまにか俯いていた。 後ろから兄が懸命に何か囁いてなだめているようだが、効き目はなさそうだ。 回転のスピードは最高潮に達し、馬も高い位置で上下しながら、軽やかに空を飛んでいる。 ――と、妹はポールから手を離し、両手で顔を覆ってしくしくと泣き始めた。 兄は、肩越しに妹を覗き込み、なだめようと必死になっている。 駄々をこねた妹が、いやいやをするように頭を大きく振った。 「あ！！危ない！」 ぐらっと傾いた妹の体をつかまえようとして、バランスを崩した男の子の体がふわっと宙に浮いた。 次の瞬間、女の子も。 息を呑むフランソワーズ。 ジョーは、咄嗟に奥歯の横のスイッチを押した。 「きゃあ・・・」 悲鳴をあげかけた母親らしき女性が、呆然とメリーゴーランドを見つめている。 「確かに・・・落ちたと思ったのに・・・どうして？」 何事もなかったかのように、白い馬に乗った幼い２人は目の前を通り過ぎる。 「あ・・・」 ほっと胸をなでおろし、フランソワーズは隣で素知らぬ顔をしているジョーを優しく見つめた。 「ありがとう、ジョー。」 何が？と、とぼける彼をフランソワーズは軽く睨む。 「もうっ・・・わかってるくせに。」 やがて音楽はテンポを落とし、メリーゴーランドはゆっくりと停まった。 まだ少しべそをかいている妹の手を引いて、男の子は両親のところへ駆けていく。 母親はしゃがみこんで妹を抱きしめ、そっとハンカチで涙をぬぐってやっている。 背の高い父親は、肩に力を入れたままの兄の頭を引き寄せると、大きな手でぽんぽんと優しく叩いた。 じっと父親を見上げていた男の子は、ようやく嬉しそうに笑う。誇らしげな表情――。 ぼんやりとその光景を眺めているジョーの横顔を、こっそり覗う。 ――そう。あなたは００９なんだもの。あの子たちを助けるなんて、簡単なことよね。 でも、あなたはちゃんと・・・。 胸の奥がきゅんとする。 そんなあなただから、私は・・・。 「何だい？」 急に振り返ったジョーと目が合い、彼女はさっと頬を染めた。 「ううん、なんでもないわ。」 心の中を見透かされた気がして、あわててメリーゴーランドに視線を移す。 「君も乗らないの？」 「えっ？」 でも・・・泣きべそかいても助けてあげないよ、とジョーはいたずらっぽく笑った。 「まあ、からかってるのね？」 「違うさ。小さいころの君が・・・どんな顔してメリーゴーランドに乗ってたのかな、って考えてたんだ。」 ―――小さいころの私？ 「ねえ、どんな子だったと思う？」 「そうだな。だだっ子で・・・泣き虫な女の子、かな？」 「えっ？・・・ひどいわ、ジョーったら！」 「だって、さっき・・・君がそう言ったんじゃないか。」 あはは、と声をあげて笑う彼に、唇を尖らせていたフランソワーズも、つられてくすくす笑い出した。 ＊ フラソワーズが選んだのは、額に星のある栗毛の木馬。 ベルが鳴り、メリーゴーランドは、ゆっくりと動き始める。 柵にもたれ、ジョーは彼女の姿をじっと目で追い続けた。 ――小さいころの君、か。 きっと、ちょっとおしゃまで可愛い女の子だったんだろうな。 思わず口に出して呟く。 木馬の足並みは、トロットからギャロップへ。亜麻色の髪がふわっと後ろに流れる。 目に浮かぶよ。 さっきの女の子みたいに、みんなから愛されて、大事にされて。 君の笑顔が、家族のみんなを幸せにしたんだろう。 僕とは大違いだ。 どこにも居場所のなかった僕。 傷だらけで、いつも隅っこにしゃがみこんでいた。 挑むように周囲を睨みつけて。 そのくせ、いつも怯えていた。 「ぼくは、ここにいていいの？」 「生まれて来てよかったの？」 ――君にも話せないような、小さいころの・・・いや、君に会うまでの僕。 彼女の乗った木馬が、目の前を飛ぶように過ぎて行く。 待ちきれなくなった頃、ようやくまた戻ってくる。 メリーゴーランドはその繰り返し。 時がするすると滑っていくのと同じ。 つかまえようとしても、どんどん行ってしまう。 彼女の姿を見ていられるのは、ほんの一瞬なのに。 待っている時間はなぜこんなに長いんだ？ 『メリーゴーランドの回転はどんどん速くなっていきます。 やがて、木馬もメアリー・ポピンズの姿も見えないくらいになったかと思うと、突然メリーゴーランドは地面から飛び上がりました。 そして、子供たちがあっけにとられているうちに、空高く舞い上がり、やがて小さくなって見えなくなってしまいました。 もちろんメアリー・ポピンズも一緒に・・・。』 ――まさか・・・。 君も、そうやって消えてしまうの？ 行かないで、ってどんなに叫んでも？ 僕の前から、ある日、突然――。 木馬は元の位置で静かに停止した。 彼女は軽やかな足取りで、自分のほうへ近づいてくる。 ジョーは、ふうっとため息をつくと、柵に覆い被さるように寄りかかっていた上半身を、ゆっくりと起こした。 「どうしたの、ジョー？」 おかしいわね、ジョーがべそかいたみたいな顔してる、と彼女は笑った。 「でも・・・久しぶりに、小さいころのこと、思い出したわ。」 ついこの間みたいな気がするのに――。 そう呟くフランソワーズの瞳に、かすかな翳りが差した。 ＊ 太陽は西に傾き始めている。 駐車場に向かう道を、２人は黙ったまま歩いていた。 ――小さいころの思い出。 幸せだったから、思い出すと辛い君。 辛かったから、思い出したくない僕。 やっぱり、君と僕とは、全然違うんだ。 君は昔に戻りたいだろう？ もっともっと幸せだったころに。 こんなふうに――僕なんかのそばにいるよりも。 「ジョー？」 心配そうに見つめる彼女。 いや、いいんだ、と、ジョーは俯いたまま頭を振った。 ――きっと、君にはわからない。 通りに面した小さな花屋の前で、フランソワーズはふと足を止めた。 「あ・・・。ジョー、ちょっと待って！」 彼女が店の中に姿を消すと、ジョーは、所在なげに通りを行き交う人々を眺める。 やけに家族連れの姿が目に付く。 あれは・・・さっきの親子だ。 あの女の子は、母親と兄としっかり手をつなぎ、ニコニコしながら歩いている。 ――頼れる兄貴、か。 ジョーは、行き場のないやりきれなさを吐き出すように、ふうっとため息をついた。 「お待ちどおさま！」 店から出てきた彼女は、小さな花束を大事そうに抱えていた。 千鳥草、飛燕草、スターフラワー、撫子・・・。 野原から摘んできたような、可憐な花たち。 「見て、可愛いでしょ？」 花束を胸に抱きしめるようにして、フランソワーズはじっとジョーの目を見つめる。 彼は黙って頷いた。 駐車場の近くまで来ると、ちょっと寄って行かない？と彼女は公園に足を向けた。 「今日は一日、いいお天気だったわね。」 オレンジとピンクのグラデーションに染まり始めた空を仰ぐと、フランソワーズは明るい声で言う。 「よかったわ。今日だけは、どうしても晴れて欲しかったの。」 「？」 「今日は・・・特別な日だから。」 打ち明け話をするように、彼女は隣に座ったジョーの耳元で囁いた。 「特別な日？」 「ええ、私、神様に・・・感謝してるの。この日があることを・・・。」 ――だって、１年で一番大切な日だもの。 蒼い瞳が、じっと彼を見つめる。 一番大切な日？ 何かいいことがあった日なの？ それで、君は今朝から楽しそうだったのか。 でも、時々、不安げに僕を見ていたのはどうしてだろう？ 「だって・・・今日は・・・」 はにかむように微笑む。 「あなたが・・・この世に生まれた日でしょう？この日があるから・・・こうやって・・・」 フランソワーズはそっとジョーの手を取った。 ――だから、私たちはこうして一緒にいられる。 僕が生まれた日？ この世に僕が生まれて、君が生まれて・・・時の輪の中でめぐり合った。 ――そして僕たちは、ここでこうして一緒にいる。 フランソワーズは腕の中の花束を、はい、と彼に差し出した。 「ジョー、お誕生日、おめでとう！」 「フランソワーズ・・・。」 君は――。 「私の好きな花ばかりなの。よかったら・・・お部屋に飾ってね。」 頬を薄く紅色に染めて、彼女は恥ずかしそうに言う。 ――君は、このために、わざわざ僕を買い物に連れ出したの？ 「ありがとう・・・フランソワーズ。」 ジョーは、笑顔を浮かべて受け取ると、そっと花に顔を埋めた。 優しく甘く・・・どこかなつかしい匂い。 「すっかり忘れてた。今日がそうだってこと・・・。」 そうだ。誕生日なんて、ずっと考えたことなかった。考えないようにしてた。 「ほんとに？よかった！」 彼の柔らかな表情に、フランソワーズはホッとしたように微笑みをこぼす。 「・・・しばらく前から、みんなでお祝いしようって計画してたのよ。今頃、研究所は・・・最後の仕上げで大騒ぎだわ。でも、あなたには・・・感づかれてるんじゃないかって心配だったの。」 さあ、帰りましょ、みんながお待ちかねよ、とベンチから立ち上がり、にこやかに彼の腕を取る。 だが――。 ジョーは、ゆっくりと首を横に振った。 思いつめたような彼の表情に、フランソワーズは顔を曇らせた。 「あ・・・・」 やっぱり、気を悪くさせてしまった？ でも――でも私、どうしても・・・。 それに、不意打ちを喰らわすなんて、騙すみたいで嫌だったの。だから・・・。 「そういうの、好きじゃなかった？ごめんなさい・・・。でもね、みんな楽しみに・・・」 懸命に明るく振舞おうとして、かえって声が震える。 ――どうしてこんなこと、思いついたのかしら。 かえって彼に嫌な思いをさせるだけ。 イワンはそう忠告してくれたのに。 でも、きっとジョーは、怒ったりしない。 だからよけいに辛い。 「もう少し・・・」 唇を噛む彼女の耳に、柔らかい声が飛び込んできた。 はっと顔をあげると、茶色の瞳が、真剣なまなざしで、じっと見つめている。 「もう少し・・・君だけに・・・祝って欲しいんだ、僕の誕生日。」 「・・・ジョー・・・？」 ほんとに？ ほんとにそう言ってくれるの？ 「しばらく、僕に付き合ってくれる？」 黙って頷いた彼女の瞳が、たちまち潤み始めた。 ＊ 小さいころ、よくここに来てた、とジョーは呟くように言った。 いつも一人で。 泣かない強情な子、といわれた僕が、こっそり涙を流しに来た場所。 「ここはね、僕だけの秘密の場所なんだ。」 この海岸で、夕陽が一番綺麗に見える場所。 その岩の上に２人で座る。 「誰にも教えたことがなかった。しばらく来てなかったしね。」 でも――。 こんなに優しい色だっただろうか、夕方の空って。 「君と・・・ここでこうしていられるのは・・・。」 ジョーは、柔らかな笑顔で、じっとフランソワーズを見つめた。 ――僕が生まれてこられたから。 フランソワーズは、黙ったまま、ジョーの腕に頬を寄せた。 ＊ 「いったいどうなってるんだよ？！」 研究所では、皆がいらいらしながら２人の帰りを待っていた。 「もう・・・真っ暗だぜ。いくらなんでも遅すぎるじゃないか！！」 気の短いジェットは、さっきから立ったり座ったり、全く落ち着きがない。 「やっぱり・・・イワンの言うとおり、ジョーの奴・・・」 ふと、まじめな顔になって呟く。 「まさか、ホントに逃げちまったっていうのか？」 まったく、とハインリヒは腕組みをしてため息をついた。 「世話のかかる奴だ。せっかくフランソワーズが、いろいろ計画してくれたっていうのに。」 『ジョーのバースデー・パーティをしたいの。みんな協力してくれる？』 宴会好きのジェットをはじめ、メンバーたちに異存のあろうはずがない。 ジョーの目を盗んで、綿密な計画が練られる。１つ１つの細かな役割分担まで。 だが――。 ”ソンナンジャ、駄目ダヨ。じょーガ知ッタラ、キット逃ゲ出シテシマウダロウ。モット上手クヤラナキャ・・・” 悔しいが、イワンが言うことには説得力がある。 自分のことは何も言いたがらないジョーの心中を覗けるのは、このコマシャクレた赤ん坊だけなのだから。 ”デモふらんそわーず、じょーガ喜ブトカドウカハワカラナイヨ。ソノコトハ覚悟シテオイタホウガイイ。” フランソワーズは、小さなため息をついて頷く。 （なんだってコイツは、赤ん坊のくせにこんなに可愛げがないんだ？！） 彼女の淋しげな顔を見ていられなくて、ジェットは叫んだ。 『ヘッ！！ジョーが何にこだわってるのか知らないが・・・ぱあっとやろうぜ！アイツが文句言えないくらいに派手によ。上手くいく方法を考えろよ、イワン！！』 計画は、全面的に見直し――。 ”マズ、コノ計画ヲ察知サレナイコトガ一番大事ダ。当日、ぱーてぃガ始マルマデ、じょーヲ研究所カラ連レ出サナキャ・・・。ソシテ何モ言ワズニ連レテ帰ッテ、不意打チヲ喰ラワセル。” 彼をいかに自然に研究所から連れ出すか、がポイントだとイワンは言う。 ”ふらんそわーずガ買イ物ニ行キタイ、ッテ言ウノガ一番イイヨ。荷物ガタクサンアルカラ、車ニ乗セテ行ッテ、ト言エバイイ。しぇふハ張々湖ニマカセル。” ちぇ、っとジェットは舌打ちをする。 会場準備係に立候補したのは、フランソワーズが料理担当だったからだ。 （どうせ、オマエだってそのつもりだったんだろ？お互い大誤算だな。） 隣に座るハインリヒを見やると、素知らぬ顔をしている。 思わずムカッと来て、心の中で叫んだ。 （何が楽しくて、野郎ばかりで、ジョーの誕生パーティーの準備をしなきゃなんないんだよ！？） ”トニカク、折角ノ計画ダ。上手ク行クヨウニ、皆協力シタマエ。” 『イワンはイイこと言うアル！ジョーのことはフランソワーズに任せて、ワイが料理の腕を振るうアルよ。みんな、ちゃんと手伝うアル〜！！』 大人は、俄然、張り切り始めた。 『・・・ほんとに全部、大人にお任せしていいの？じゃあ・・・ケーキはムースかババロアにするわ。それなら、先に作って冷蔵庫に冷やしておけばいいし。』 フランソワーズもイワンの意見に納得し、作戦は秘密裡に実行されることになった。 なのに――。 「フランソワーズ、どこかで置いてきぼりになって・・・途方に暮れてたりしないだろうな？」 ぼそっとつぶやいたグレートの声に、皆ははっと顔をあげた。 まさか！と、ピュンマは首を振る。 「もしそうなら、連絡してくるさ。それに・・・ジョーが、そんなことするはずないだろう？」 冷静な彼の言葉に頷く。 「ったく、アイツらは何をやってんだか。」 柱時計をちらりと見て、ハインリヒはまた大きなため息をついた。 ”大丈夫、心配イラナイ。モウスグ帰ッテ来ルヨ。” 「じゃあ、そろそろ最後の仕上げアル！温かい物は温かく、冷たいものは冷たく、が料理の基本アルよ！！飲み物も用意しなくちゃいけないアル！みんな、ボーっとしてないで、じゃんじゃん働くアルヨロシ！！」 メンバーたちは、大人に追い立てられるようにキッチンに向かった。 「フフフ・・・」 その後ろ姿を可笑しそうに見送ると、ギルモア博士は、ゆりかごの中を覗きこんだ。 「オマエさんも、なかなか洒落たことをやるのう、イワン。誰も・・・気づいてないようじゃが。」 イワンは博士に向かってパチっとウィンクすると、まだ海岸にいるジョーに、メッセージを送った。 ” Ｈａｐｐｙ Ｂｉｒｔｈｄａｙ ｄｅａｒ Ｊｏｅ！ Ａｒｅ ｙｏｕ ｈａｖｉｎｇ ａ ｇｏｏｄ ｔｉｍｅ？ Ｔｈｉｓ ｉｓ ｍｙ ｐｒｅｓｅｎｔ ｆｏｒ ｙｏｕ！” |