「ねえ、見て、ジョー！なんて綺麗なんでしょう！！」
そよ風に若葉を揺らした木々がそっと零す七色の水滴に、キミははしゃいだ声を上げる。
「虹色のシャボン玉みたい。キラキラしてて、素敵ね！」
キミの蒼い瞳のほうが、ずっと綺麗だよ。
明るい初夏の陽射しを受けて、眩しいほどに輝く亜麻色の髪。
そう、キミはボクにとって太陽そのものだ。
「……ジョー？どうしたの？」
美しい横顔に見とれていたボクは、ハッと我に帰った。
「……え？あ、ごめん」
「んっ、もう！せっかく二人っきりのヴァカンスなのに、何を考え込んでるの？」
「いや……何でもない」
「うそ！ちゃんと顔に書いてあるわ！私の話、全然聞いてなかったでしょう？」
キミは優しくボクを睨んだ。
「何て書いてある？」
ボクはまじめな顔をして、蒼い瞳をじっと覗き込む。
フランソワーズは小さく肩をすくめると、つうっと背伸びをして麦藁帽子をボクにかぶせた。
白い腕にそっと抱き寄せられ、唇に柔らかな花びらが触れる。
眩暈がするようなキスの後、ボクはキミをしっかりと抱きしめて耳元で囁いた。
「……正解！」
若葉がさざめくように揺れ、虹色の光があたり一面に零れた。
梅雨の合間。
眩しい高原の朝のひととき…。